中古不動産の取引で誤解しがちなのは「現状有姿」という言葉です。「現状有姿」には、以下の2つの

意味があります。

① 対象となる不動産に経過年数に応じた小さな傷や汚れが存在しても、売り主が修繕などの手を加　

えず「あるがままの姿」で引き渡すこと

② 契約締結時の後、引き渡しの間までに対象となる不動産の状態に変化が生じても、売り主の立場と

しては引き渡し時の「あるがままの姿」で引き渡すこと

瑕疵担保責任とは、「契約時に買主が気づかなかった隠れた欠陥(瑕疵)」に関し、売り主が責任を負う

べき「期間」と「範囲」を定めたものです。

 

「期間」については、民法の規定によって買主が瑕疵に気づいてから1年間は売り主側に責任が問えま

す。売り主が宅建業者の場合は責任期間は2年間になります。

ですが、瑕疵担保責任の「範囲」には民法上明確な規定がありません。

 

不動産契約でよくある取り決めは、「シロアリや雨漏りなどの構造上の主要な部分の木部の腐食、給排

水設備の故障の瑕疵に関して責任を負うものとし、期間は物件引き渡しから3ヵ月間」という定め方で

す。

 

例えば、中古住宅を購入して１ヵ月後に、雨漏りが見つかった場合は「瑕疵担保責任」の対象になりま

す。また、敷地内の水道管から水漏れをした場合も同様です。

 

中古住宅に備え付けの給湯器やトイレ、エアコンなどの設備は、引き渡し後に故障した場合、瑕疵担保

責任の対象になるでしょうか？ 

給湯器やトイレ、エアコンなどの設備は、経年劣化が避けられません。

これらは「現状有姿」の対象です。ですが、契約前からすでに設備の調子が悪いことを売り主が承知し

ていて、故意に買主に隠していた場合はトラブルになるかもしれません。

仲介する業者は、売り主から売却物件の家屋の構造や給排水設備の欠陥がないか、修理の履歴、備え付

け設備の経年数など十分聞き取り、室内の照明器具、トイレの温水便座、キッチンの設備、庭木や庭

石、物置など、どれを売却し、どれを残すのかはっきりさせるべきでしょう。

買主も、疑問点があればひとつひとつの設備について説明を求めましょう。

 

落ち着いた雰囲気の坪庭が気に入って購入を決めたのに、売り主が引っ越し先に持って行ってしまっ

た、という例もあります。この場合、売り主は坪庭を不動産に付随して売却するつもりはなかったの

で、買主は「現状有姿」の契約から、クレームはつけられません。

民法の規定による「現状有姿」の立場からは、前述の坪庭の例のように、不動産に付随する設備や備品

を売り主が引っ越す際に持って行ってしまうケースの他、引っ越しの際に小傷ができた場合も「現状有

姿」となるでしょう。

ですが、天変地異など、売り主にも買主にも責任が問えない場合もあります。そんな時には「危険負

担」という考え方をしますが、それは別項で説明します。

民法上、瑕疵担保責任の範囲は明示されていません。ですが、通常、契約文書に「現状有姿引き渡し」

とあっても、瑕疵担保責任を問える場合はあります。

すべてを「現状有姿ですから」と言い逃れる業者の言葉を鵜呑みにしてはいけません。

瑕疵担保責任の対象をはっきりさせ、現状有姿引き渡しの対象設備はどれか、契約時にしっかり確認し

ましょう。