親から相続した実家をどうするか、子どもたちにとって、しばしば問題になります。特に都市部の駅チ

カ物件の場合、売却する他に賃貸物件として活用する方法もあります。ですが、賃貸物件とする場合、

結局維持費がかさみ、思ったほどの収益が上がらない場合もあるので、注意が必要です。

東京区部から電車でさほど遠くない住宅地のマンションに住む金子さん(仮名)は、「スープの冷めない

距離」に実家があります。父親が脳梗塞で倒れた10年前にバリアフリーにリフォームし、水回りも一新

した実家ですが、父親が亡くなった後、後を追うように母親も急逝。きれい好きの母親が手入れを欠か

さなかったせいもあり、金子さんが見たところではまだまだ使えそうな実家です。

金子さんは、地元の不動産業者に相談して、駅から5分の立地を生かして貸家に出してみることにしま

した。借り手はほどなく見つかり、金子さんは「大家さん」になりました。

入居者は子ども2人の家族でしたが、入居後１ヵ月で「ウォシュレットの水が止まらない」という連絡

が入りました。業者を呼んで修理を頼んだところ「製品の型番が古くて交換部品が入手できない」との

こと。結局便器全体を丸ごと交換することになりました。

半年後にはガス給湯器が不調となり、こちらも製品が古いせいで交換するはめに。業者の話では、老夫

婦2人の生活と子ども持ちの家族では、使い方も違うので、水回りの劣化が一気に進んだのかもしれな

いとのこと。

収益を上げようと積極的に考えていたわけではないものの、あまりにも出費がかさむことを友人に愚痴

を言った金子さんは、友人からさらに心配な話を聞かされました。戸建は維持費がかさむという話を聞

かされたのです。10～15年間隔での外壁塗装、屋根のチェックも必要という話です。マンション住ま

いの金子さんにはまったく思いつかなかった出費です。「マンションでは修繕積立金を積み立てている

でしょう？戸建は自分で計画を立てて積み立てる必要があるのよ」と友人に言われ、金子さんも納得し

ました。

ですが、両親が建てた実家の直近の外壁塗装はいつだったか、金子さんにははっきりした記憶はありま

せん。金子さんは、次の契約更新は中止して、実家を売却しようかと迷っています。

当初から収益物件として資産運用している相続不動産であれば、管理契約をしている業者があるはずで

す。ですが、相続した実家などの空き家を貸して収益を得ようと思うなら、管理にかかる費用を試算

し、売る貸すか、慎重に見極める必要があります。賃貸物件の運用には思いの他費用が掛かるものだか

らです。あらかじめ数社に見積もりをとってもらい、よく検討することをおすすめします。

また、金子さんの場合は、相続人は金子さんひとりだけでしたが、相続人が複数いる場合は、相続不動

産の今後の運用のためにも、なるべく名義を一つにまとめておくべきでしょう。金子さんのケースが共

有名義物件だった場合、家賃の分配、維持費、修繕費の分担についても悩みのタネとなったことでしょ

う。

相続不動産を資産運用するか売却するか検討するには、売却するとしたらいくらで売れるのか知る必要

があります。そのためには複数の業者から見積もりを取るようにしましょう。会社によって数百万の差

がでることも稀ではありません。

また、地元の業者だけでなく、全国展開する大手の業者、自分の得意分野がある業者など、できるだけ

いろいろな業者に依頼すると、自分たちの相続不動産の特徴や強みなど、思わぬ発見があるかもしれま

せん。