相続したものの、住む予定がない実家を空き家のままにしている場合は結構あります。
空き家を解体して更地にしてしまうと、固定資産税が6倍にもなるため、とりあえずそのままにしておこう、と考える人が多かったからです。
ですが、「空き家対策特別措置法」が施行され、空き家を放置しておくと罰金が科せられ、行政代執行による解体諸費用を自治体から請求されるようになりました。
2015年5月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」が施行されました。
この法律の目的は全国的に増え続けている空き家について所有者に適切な管理を求め、空き家を減らすことです。
相続した実家に誰も住む予定がない場合や、相続で揉めていて処遇が決まらない場合、しばしば空き家のままになる場合があります。
佐藤さんの実家は都心から電車で1時間ほどの隣接県にあります。
一人暮らしの母親が認知症で施設に入り亡くなってから5年。実家の不動産は、佐藤さんと妹で相続し、共有名義になっています。妹は海外在住で、仕事も忙しいために滅多に帰国しません。
そんなわけで、実家は10年近く人が住まない空き家になり、庭も荒れ放題でした。
佐藤さんも妹も、実家に住む予定はありません。
ですが、売却の話もせずに今まで実家をそのままにしていました。固定資産税もさほど負担になるような金額ではありませんでした。
そんなある日、佐藤さんの自宅に一通の手紙が届きました。差出人は実家の地区の自治会長でした。手紙の内容は、老朽化した実家についての苦情でした。
ブロック塀の倒壊の危惧と、草茫々の庭にはゴミの不法投棄もあるとのこと。
何らかの対策をとってもらえない場合は、自治体に相談することになり、「空き家対策措置法」の「特定空家」に指定される可能性もある、ということでした。
特定空家に指定され、行政から指導を受け、勧告・命令を受けても何の対応もしないと、罰金が科せられる可能性があります。
それに、特定空家に指定され、改善の勧告を受けただけで、固定資産税は今の6倍になります。
その上、行政代執行により空き家の解体を行った場合には、その実費が請求されます。
佐藤さんはすぐにでも実家を売ってしまいたいと思いましたが、売却には共有名義の妹さんの同意も必要です。
佐藤さんは妹にメールを送りましたが、売却に反対ではないものの、手続きだけのためにすぐに帰国できる状態ではない、という返事でした。
佐藤さんは、手紙を受け取った日の週末に、手土産を持って自治会長の家を訪ね、それから月に一回実家の様子を見に通う約束をしました。
確かに荒れ放題の実家は近隣の迷惑になっているのは明らかでした。
ですが、人を雇うほどの余裕はないので、佐藤さんは自力で草刈りをし、DIYで塀の補強工事や、実家の外壁のペンキ塗りをしています。
夜間の防犯灯も設置し、自治会長も、今のところは「市役所には空き家として通報しない」と言っています。
妹さんが帰国できるまで、まだまだ時間はかかりそうなので、佐藤さんはこの先の自分の体力と管理のための資金が心配でたまりません。
佐藤さんのようなケースでは、例えば当社が佐藤さんの分だけ共有持分を購入して、管理を行うことも可能です。
人が住まなくなると、家はどんどん劣化しますので、空き家対策は早めに行うことをお勧めします。