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共有名義の不動産相続トラブルに巻き込まれるのを避けるために、自分の相続権を相続放棄してしまう方法もあります。
相続放棄自体の手続きは簡単で、相続の発生を知ってから3ヵ月以内に、被相続人の最期の居住地の家庭裁判所に申し立てを行うだけです。
共有名義不動産相続のトラブルに巻き込まれるのを避けるために、自分の相続権を相続放棄してしまう方法もあります。
相続放棄自体の手続きは簡単で、被相続人の最期の居住地の家庭裁判所に申し立てを行うだけです。
今回は小川さん(仮名)の経験した共有名義不動産の相続放棄の話を紹介します。その中で相続放棄を含
めた財産の相続の仕方3つについて紹介いたします。
小川さんの実家は北関東の地方都市の旧家ですが、
父親は昔で言う「艶福家」で、小川さんの母親は、父親の女性関係に疲れて、小川さんがまだ幼い頃に離婚し、長男である小川さんを連れて実家に帰ってしまいました。
その後、父親は離婚再婚を繰り返し、数人の女性との間に5人の子どもをもうけました。
最期は小川さんの腹違いの妹に看取られて亡くなりました。
小川さんの5人の弟妹は、相互に親交もありませんが、それぞれの母親たちが父親の遺産を相続させようと努力?させていたせいか、父親とは年に何度か会っていたようです。
小川さんの母親も、「あんたは長男なんだから」と常々言い続け、自分の戸籍に小川さんを入れずに通してきました。
その母親も昨年亡くなりました。
小川さん自身は、思い出もない父親や実家には未練はなく、共有名義不動産の相続のごたごた
には関わりたくない気持ちでいっぱいでした。
そんなところに、義妹から知らせが届いた父の死です。葬儀はすでに済ませたとのことでしたが、何の感慨もありません。
「お義兄さんにはご足労ですが、共有名義の相続不動産のことを話し合いたいから、一度家まで来てもらえますか?」と義妹。
一応の日時を聞いたものの、小川さんは気が進みません。
相当の資産はあるらしいのですが、それよりも共有名義人の弟や妹、その背後にいるそれぞれの母親を思い浮かべると、うんざりするのです。
小川さんは大学時代の同級生に司法書士がいたことを思い出し、
共有名義の相続不動産について相談してみることにしました。
話を聞いた友人が勧めたのが「相続放棄」。
「そんなに共有名義人がいるなら骨肉の争いになりかねないね」と友人は言いました。
友人の話によれば、
相続が発生した時に、被相続人の財産を引き継ぐかどうかは相続人の意思で決められるとのこと。
これは小川さんも知りませんでした。
具体的な相続方法は以下の3つです。
① 単純相続:相続人が留保をつけずにすべての財産と債務を相続することです。
一般的な相続ではこの方法が多いはずです。
② 限定相続(限定承認):すべての財産を相続するが、債務の弁済責任はプラスの財産を限度とする旨の意思表示をする方法です。
財産が債務よりも多ければ、弁済した後手元に現金が残ります。債務が財産よりも多い場合は、債務の責任は負わずに財産を相続できます。
借金がどれだけあるかわからない場合や、特定の財産のみ相続したい場合に使われる方法です。
③ 相続放棄:すべての財産、債務を相続しない旨の意思表示をすることです。
相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。
小川さんは躊躇なく共有名義不動産の相続放棄を選ぶことにしました。
「手続きに必要な書類は被相続人との関係によって違うけれど、
被相続人が亡くなった時の住所地の家庭裁判所に申し立て書を出せばよいだけだよ。
でも、相続放棄ができない場合もある。」
と友人はアドバイスしてくれました。
それは以下のような場合です。
① 相続財産の処分行為:相続人が財産の一部または全部を処分した時
② 熟慮期間の経過:相続人が相続の発生を知ってから3ヵ月以内に限定承認または相続放棄をしなかった場合
③ 背信行為:相続人が限定承認や相続放棄をした後に相続財産を隠匿したり自分のために消費した場合など
「注意しなければならないのは熟慮期間を過ぎてしまわないうちに手続きすること。
でも、事情がある場合は家庭裁判所に期間の延長を求めることもできるよ」
小川さんは友人のアドバイスで、その後ほどなく共有名義財産の相続放棄の手続きを取り、義妹に連絡しました。
共有名義財産に拘っていた亡くなった母親には少し申し訳ない思いもありましたが、小川さん自身は相続放棄をして肩の荷を下ろした気持ちです。
金の切れ目が縁の切れ目とはよく言ったもので、それから義理の弟妹からの連絡はまったくありません。
人によって考え方はそれぞれですが、親族が共有名義の財産や不動産を巡って争う姿は見苦しいものです。
はじめから小川さんのように共有名義不動産の相続トラブルが予想されている場合は、
相続放棄をしてしまうのも選択肢のひとつです。