老いた親の面倒を見るのは並大抵のことではありません。

ですが、介護と所有権の問題は別で、遺言がなければ、介護をしたことと相続には何の関係もありません。(裁判で認められる場合もあります）

相続不動産があり、共有持分権のある共有持分権者に不動産の持分権比による請求をされても仕方がありません。

今回は同居して親を看取った姉が弟から家賃を請求されたケースをご紹介します。

最近では息子が家を継いで親と同居するよりも娘に頼りたいというケースが増えています。

鈴木さんの場合も同様で、長女である鈴木さんがご両親と同居し、お二人の介護を経て先ごろお母様を見送ったところです。

鈴木さんには弟が一人いますが、

先日弟から「姉さんが住んでいる家は俺との共有名義。古いけれど駅から近いから、貸せば20万円は取れる家。家賃として俺の共有持分比で10万円払ってもらえないか」

という話がありました。

「母の葬儀の後、相続関係の手続きは弟に任せておいたのが間違いでした」と鈴木さんは腹を立てています。

弟さんにしてみれば、

「姉さんは専業主婦で、義兄さんの稼ぎもあるのに、タダで家を手に入れたようなものじゃないか。介護をしてもらったのは感謝してるけど、かかったお金も親の預金から支払ったはず。俺は家のローンに追われて働きづめで親の面倒を見たくてもそんな暇はなかったんだ」とのこと。

「お袋の預金も、出金しやすいように全部姉さんの名義になっていて、俺が請求できるのは共有持分のある家の家賃だけですよ」

鈴木さんのお母様は特に遺言を残すことなく、認知症状態で亡くなったため、法律上は弟さんの家賃請求を不法とは言えません。

 

鈴木さんと弟の話し合いは平行線を辿りました。

弟さんは法的手段を検討して司法書士に相談したところ、共有持分をお姉さんに買い取ってもらう提案を受けました。

 

「お金もさることながら、ことあるたびに、親の面倒もみなかったくせに、と言われるのがたまらなく嫌だったのです。法的に間違ったことはしていないのに、悪者扱いされるのも嫌でした。本当にうんざりしていたのです」

 

間に人が入って説明を受け、鈴木さんも納得。

共有持分買取物件を数多く取り扱う不動産業者の紹介を受けて、弟さんも納得する価格で弟さんの共有持分を買い取りました。

 

「母の死亡保険が下りたので。面倒を見ていたので、受取人は全部私にしていましたが、考えてみれば弟にも言い分はありますね。親の面倒を見たんだから、弟に家賃を支払う義理はないと思っていましたが、それとこれとは別なんですね」

 

家族の問題は感情的にこじれると大事なポイントを見失ってしまいます。第三者、特に専門家の意見を聞いてその分野のプロの業者に解決を手伝ってもらうのも一つの選択です。