少子高齢化社会、長寿の親よりも先に子どもが亡くなるケースもないわけではありません。一人息子を後継者に、と思っていた鈴木さんもそのような不幸に見舞われた一人でした。
鈴木さんの家は、系図を辿ると江戸時代まで遡れるという老舗の酒屋です。一族で商売を盛り立ててきましたが、鈴木さんは弟や妹と家業の方針の意見が合いません。
「弟は自分で分家して開業するから資金が欲しいと言うし、妹は商業ビルを建てて儲けたいから代々受け継いできた不動産を売却して自分に分けて欲しい、と言うのです。先代が亡くなった時にそれ相応の相続財産を受け取っているのだから、今更何を、と思うのですが」
そんな鈴木さんも一人息子が結婚し、孫が生まれて一安心。息子を社長に、自分は会長職に退いて老後を楽しもうと思っていた矢先、息子が急な心臓発作で亡くなってしまいました。孫はまだ中学生でした。
鈴木さんは息子の急逝にとても気落ちしました。
自分にもしものことがあった時、弟や妹が孫を差し置いて会社の財産を好き勝手に処分されるのではないかと心配になったのです。
「会社の顧問弁護士に相談したら、私の財産は、妻と、亡き息子の代わりに代襲相続で中学生の孫が法定相続人になるとのこと。弟や妹には相続権が無いと聞いて安心しました。ですが、念のために公正証書遺言を作成して、不安材料をなくそうと思っています」
被相続人に子どもがいる場合は、子どもが亡くなったとしても代襲相続で孫が法定相続人となります。その場合、被相続人の兄弟姉妹には相続権はありません。