相続人が死亡して、遺産相続できない場合には、相続人の子どもが遺産を相続する場合があります。これを代襲相続と言います。相続人に子どもがいない場合、兄弟姉妹が遺産相続する場合もありますが、その兄弟姉妹が先に亡くなっている時には、甥や姪が遺産相続をします。これも代襲相続です。
山田さんは50代のサラリーマンです。昨年、一昨年と相次いで両親を見送り、いよいよ自分も人生の折り返し地点だと実感していたところに、突然、地方都市の法律事務所から手紙が来ました。
内容は、山田さんの叔父さんが亡くなったので、叔父さんが所有していた不動産の相続手続きをしてほしい、というものでした。
「亡くなった父と叔父さんは二人兄弟でしたが、性格が合わず、何年も音信不通でした。一昨年父が亡くなった時にも連絡が取れず、どこでどうしているのか全く知りませんでした。私も会った記憶がほとんどありません」
とにかく山田さんは会社を休んで、叔父さんが住んでいた地方都市に向かうことにしました。
叔父さんは独身で、小さな居酒屋を経営していましたが、病気になってから店をたたみ、親しい友人たちに看取られて亡くなったそうです。友人たちがお葬式も出してくれて、生前購入していた小さなお墓にお骨は納めてもらったとのこと。
「ですが、病気で入院していた病院の支払いや、滞納していた税金、店舗兼住宅の不動産、それに友人の一人には借金もあったのです。法律事務所の弁護士さんからは、相続放棄もできる、と言われましたが、それでは叔父さんによくしてくれた人たちに申し訳ないと思って」
結局山田さんは、一旦叔父さんの不動産を相続して、売却。その売却金で、友人からの借金や、いろいろな支払いを済ませることにしました。
「手続きには時間もかかりましたし、差し引きすると、手元に残ったのは交通費くらいでしたが、とにかくほっとしています」
親族に、未婚だったり、子どものいない身内がいる場合、山田さんのように代襲相続が発生することもあります。
また、自分自身の相続人が甥や姪になりそうな場合、生前に相続について話し合っておくことをお勧めします。分割時に揉めそうな不動産などは、売却して現金化しておく方が良いこともあります。