横山さんの両親は、10年ほど前に熟年離婚。母親は専業主婦でしたが父親の退職金を半分財産分与で得て、今は横山さんと同居しています。父親は、その後別の女性と再婚しましたが、つい最近、亡くなりました。妻との間には子どもはいません。
父親の葬儀後に、父親の親友だったA氏が「実は、お父さんから遺言書を預かっている」と、妻と横山さん兄弟に告白しました。
妻は中身を大変気にしていましたが、開封したら無効になることをA氏が忠告したので、横山さんは、すぐに家庭裁判所に遺言書を持ち込み、遺言書の検認の手続きを取りました。
「ところが、検認手続きが済んで、驚きました。なんと、全財産を妻に相続させるという内容だったのです」
横山さんの父親は離婚後に親の不動産を相続し、いくつかの賃貸マンションを持っていました。遺言書の内容は、無職の妻の老後を心配して、自宅や預貯金、賃貸マンションの全てを譲るという内容だったのです。
「母は離婚したから、もう相続権はないことはわかりますが、私たち兄弟に1円も残さないとは。法定相続分で考えると、遺産の半分に子どもたちの相続分があるはずなのに。ここ数年、身体を壊してしまい仕事を休みがちなため、正直なところ、父の遺産が少しでももらえると生活が助かります。」
横山さんは、弁護士に相談して、「遺留分」を主張できることを知りました。横山さんたち兄弟は、妻に対して遺留分減殺請求ができるのです。
横山さんは、遺留分減殺請求について注意すべきポイントのアドバイスを受けました。
遺留分を請求できるのは、配偶者、子ども、両親などの一定の法定相続人
遺言や贈与などがあり、遺留分が侵害された場合に請求できる
請求権には時効がある(相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年)
横山さんの父親の遺産の大半は不動産でした。遺留分減殺請求額を算定するには不動産の評価額を査定する必要がありました。
そのため、横山さんは不動産鑑定士に不動産の査定を依頼したそうです。
遺留分を侵害されたら、遺留分の減殺請求が可能ですが、遺留分を侵害された法定相続人が自分から請求の手続きをしなければなりません。
また、相続財産に不動産がある場合、遺留分侵害減殺請求をどれだけできるのかを調べるために、不動産の価額の査定が必要です。